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初めて論文を書こうとしても,なかなかできるものではない。化学論文の英語は日常の英語とは異なるうえ,雑誌毎に書式も異なることが心理的な障壁になっていることが多い。私自身,日本化学会が出版している欧文誌The Bulletin of the Chemical Society of Japanならびに速報誌Chemistry Lettersについては,「投稿の手引き」(日本化学会編,第4版
1989年)を長らく参考にしてきたが,電子投稿の時代になって書式の大幅な変更もあり,もはや間に合わなくなってきた。2004年4月から速報誌の編集委員長を務めるようになり,出版の過程をつぶさに知るにいたって問題意識をもっていたところ,速報誌編集顧問として論文の最終段階で英文ならびに書式の最終チェックをしていただいている松永義夫先生(北海道大学名誉教授)が情報言語研究所の荒木啓介氏とともに「化学英語のスタイルガイド」を出版されることになった。化学および広く化学にかかわる科学分野において,英語論文執筆時に必須の知識が,学生・院生ならびに研究者用に分かりやすく解説されている。とくに,論文で頻出する英語語句について,日本人研究者が英語論文の執筆で間違えやすいポイントを,アルファベット順位に,科学英文での実例,文法上・論文使用にあたっての注意,間違えやすい点などを併記して解説してある。一見して有用な参考書であることがわかる。しかも,日本化学会の2誌のみならずアメリカ化学会の雑誌に投稿する場合にはこうしたらよいと解説もしてある。日本化学会が自信をもって推奨する本である。ぜひとも化学会会員の多くの方に読んでいただき,論文投稿の際に活用していただきたいと願っている。
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