(2011. 5. 10 更新)

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34学会(44万会員)会長声明
日本は科学の歩みを止めない
〜学会は学生・若手と共に希望ある日本の未来を築く〜



  1. 学生・若手研究者が勉学・研究の歩みを止めず未来に希望を持つための徹底的支援を行います
  2. 被災した大学施設、研究施設、大型科学研究施設の早期復旧復興および教育研究体制の確立支援を行います
  3. 国内および国際的な原発災害風評被害を無くすため海外学会とも協力して正確な情報を発信します

    平成23年(2011年)4月27日(水)

    2011年3月11日に発生した東日本大震災により,亡くなられた多くの方に心から哀悼の意を表しますとともに,大切なご家族を失われた方々や困難な生活を続けられている皆さまに心よりお見舞い申し上げます。また、被災地や福島第一原子力発電所の事故に対応してご尽力されている方々に,深く敬意を表します。近代日本史上未曽有の東日本大震災とそれに続いた福島原子力発電所の事故により、今日の科学・技術の限界を痛感しております。しかし同時に、今こそ日本の復興・新生のために科学・技術による貢献が欠かせないと考え、我々,34学会(44万会員)は研究・技術コミュニティの総力を挙げて知恵と力を出す覚悟です。
    大震災により,東北地方をはじめ東日本の大学および研究施設も大きなダメージを受けました。 科学・技術は日本の根幹であり,資源に乏しい我が国においては高度な研究と人材が日本を支える礎です。この震災による大きな困難を克服し,さらに文化的で豊かな社会を創り出すためには,科学の前進は不可欠です。我々は,被災した大学施設や研究施設の早期復興および教育研究体制の確立支援を行い,科学・技術の歩みを続ける所存です。
     とくに,これからの将来に夢膨らませ,日々努力を重ねていた大学生,大学院生,そして研究の道を歩み始めた若手研究者,とりわけ博士研究員(ポスドク)にとって,今回の震災は日常生活を奪うだけでなく勉学,研究の場を奪い,将来の夢までも失わせることになりかねません。我々,34学会会長は,日本の将来ある若者たちが日本を代表し世界の第一線で活躍することが,日本の復興及び持続ある社会の構築に欠かせないと考えます。我々は現状に鑑み,学生・博士研究員・若手研究者と共にある学会として,被災により勉学や研究活動に影響を受けた若者が勉学や研究の歩みを止めず,未来に希望を持ち活躍していくために,日本の全ての大学,研究施設のネットワークにより,学生・博士研究員・若手研究者への徹底的支援を行っていくことを表明します。既に私達は活動を始めていますが,こうした支援はなるべく早急にかつ継続的に行うことが必要であり,さらに強化し,国と協力しながら,被災した大学および研究施設が1〜2年間の間に勉学・研究を落ち着いてできる状態になるよう最大限の支援を行います。
    福島第一原子力発電所放射性物質の漏出に対して,海外マスメディアの必ずしも正確でない報道にも影響されて国際的に放射性物質による汚染の風評被害が起きており,国民社会、研究・教育、産業等に様々な影響が出ております。多くの分野の専門家集団から構成される科学者コミュニティとしての各学会は一致協力して,これまでにも増して国内はもちろん各国学会とも協力し,海外の風評被害を抑えるための対応を図ることを表明します。

    提言① 1〜2年の間,学生・若手研究者が勉学・研究の歩みを止めず未来に希望を持つための徹底的支援を行います
    現状では,被災した大学,研究所では多くの装置,機器類が使用できず,若者たちがこれまでの努力を持って得た貴重な勉学・研究の時間が奪われています。また,それによる勉学・研究への意欲の低下,精神的ダメージが非常に大きいのが現状です。さらに、経済的問題から生活に対する不安も抱えています。我々は,教育・研究施設の早期復旧復興を図ると同時に,学生・若手研究者の不安を解消するメンタルケアに力を注ぎます。また,復興初期段階である当面の間,彼らが勉学・研究の歩みを止めずに未来に希望を持つための経済的支援を含む具体的な支援について国と共に最大限尽力いたします。

    提言② 被災した大学施設、研究施設、大型科学研究施設の早期復旧復興および教育研究体制の確立支援を行います
    被災した大学,研究施設では建物の損壊をはじめ,地震によって建物,施設,装置や設備、貴重な研究資料や試料が破損されました。こうした施設,装置,設備,資料,試料については,ただ単に震災前の状態に戻すということではなく,予算面からも柔軟かつ効率的な支援を行っていくことが望ましい。すなわち,全日本の協力体制が欠かせません。研究体制・研究教育環境の復旧復興にあたっては,今後を見据えて教育研究予算を柔軟に使用できる工夫が必要です。国税による予算を無駄なく,そして効率的に使用するためにも,柔軟できめ細かい対応を国と共に最大限尽力いたします。
    被災地域には我が国が有する大型装置を備える研究施設が多くあり,これら大型装置の被災による損害は甚大です。こうした研究施設,例えば,大強度陽子加速器施設(東海村)や高エネルギー加速器研究機構(つくば市)の加速器施設やフォトンファクトリー等は,多くの学生,若手研究者にも利用されています。大型装置を有する研究施設は大電力を要しますが,電力問題に配慮しつつ,早期復旧復興を目指し,今後も世界をリードする責務を果たせるように国と共に最大限尽力いたします。

    提言③ 国内および国際的な原発災害風評被害を無くすため海外学会とも協力して正確な情報を発信します
    東日本大震災や福島第一原発事故に関して,各国の学会からお見舞いと励ましや協力の申し出など心温かいメッセージをたくさん頂きました。一方で,海外マスメディアの報道に必ずしも科学的に正確でない情報が氾濫し国際的な風評被害を招いています。これにより、国民社会、研究・教育、産業等に様々な影響が出ております。我々は国内はもちろん、各国の学会に可能な限り正確な情報を発信し,各国の学会と協力して,福島原発放射性物質漏出事故の国際的な風評被害をおさめ,科学技術立国としての我が国の貢献を果たすために最大限尽力いたします。

    上記3つの提言に対して,我々34学会学会長は努力を惜しみません。すでに学術会議等とも連携し迅速な対応を行っておりますが,今我々にできる震災後の社会貢献を上記の3点にあると考えました。提言①②は科学を志す若者とそのご家族に向けて,提言提言③は国民の皆様全体にお伝えしたいと思います。国民の皆さまのご理解とご支援によって,34学会は国や各国の学会と連携し,次代に希望ある日本の未来を築いていくことをお約束いたします。

    問合せ先:
    公益社団法人日本化学会会長 日本学術会議第三部長 電気通信大学 特任教授  岩澤 康裕
    〒182-8585 東京都調布市調布ヶ丘1-5-1
    E-mail: iwasawa_at_pc.uec.ac.jp, Tel: 042-443-5921

    連絡先:
    東京大学大学院医学系研究科 教授  北 潔
    〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1
    E-mail: kitak_at_m.u-tokyo.ac.jp, Tel: 03-5841-3526


    東京大学大学院理学系研究科・理学部 准教授  横山 広美
    〒113-0033 東京都文京区本郷7-3-1
    E-mail: yokoyama_at_sp.s.u-tokyo.ac.jp, Tel: 03-5841-8856


    公益社団法人日本化学会 常務理事兼事務局長  川島 信之
    〒101-8307 東京都千代田区神田駿河台 1-5
    E-mail: kawashima_at_chemistry.or.jp, Tel: 03-3292-6161, 6172, Fax: 03-3292-6318


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