日本化学会「化学遺産認定」紹介:2011/12/5

 

紹介

展示風景
展示風景

日本化学会の化学遺産委員会は、 化学に関わる学術及び技術の歴史を示す具体的な事物・資料の内、 化学の発展史上重要な成果を示すもの、 国民生活、文化、経済、社会、教育に貢献したもの を「化学遺産」として登録・認定しています。
これまでに認定された第001号から第010号の10点を紹介するパネルを、科学博物館(東京・上野公園)の日本館1階中央ホールで展示しています。
企画展もしくは常設展入館料のみでご覧いただたけます。
12月11日(日)まで開催。


現在、科学博物館では企画展「化学者展」「ノーベル賞110周年記念展」を開催中です。
「化学者展」では日本の近代化学の夜明けを担った4 人の化学者、桜井錠二・池田菊苗・鈴木梅太郎・真島利行を取り上げ、宇田川榕菴訳の「舎密開宗」、池田菊苗が最初に抽出したグルタミン酸試料「具留多味酸」、鈴木梅太郎研究室で抽出・分離された「米糠の成分」標本といった貴重な資料が展示されています。
「ノーベル賞110周年記念展」ではアルフレッド・ノーベルの少年時代・発明と産業化の足跡・旅の多い人生を紹介し、ノーベル財団設立の根拠となった遺書が展示されています。また日本人受賞者達の功績が展示され、福井謙一(1981)・白川英樹(2000)・野依良治(2001)・田中耕一(2002)・下村脩(2008)・根岸英一(2010)・鈴木章(2010)の歴代ノーベル化学賞受賞者の生立ち・研究成果・エピソードがイラストと縁の品をまじえて紹介されています。

(日本化学会)

→ フォトアルバム

▲このページのトップへ戻る

 

「きみたちの魔法―化学『新』発見」展:2011/11/22

 

紹介

展示風景
展示風景

 日本化学会主催の世界化学年2011特別展「きみたちの魔法―化学『新』発見」展が19日から東京・お台場の日本科学未来館で開幕(会期=19日〜27日)致しました。
子供たちに化学の「不思議で、きれいで、面白い」ことを体感してもらい、しかも身近にあって役立っていることを知ってもらうのが目的です。感熱色素、フォトクロミック材料、蓄光材料、香料、形状記憶合金、衝撃吸収材、偏光フイルム、反射防止膜など先端材料を使って、子供たちが直接手で触れて遊べるようになっています。また分子の電子顕微鏡写真を大画面で映し出し、分子の美しさ、化学をデザインする面白さを体感できます。
なお科学技術振興機構主催のサイエンスアゴラ(19日〜20日)の楽しいサイエンス部門でサイエンスアゴラ賞を受賞致しました。 26日、27日には夢・化学−21委員会主催の子ども化学実験ショーも同じ会場で開催されます。ぜひ、日本科学未来館にお越し下さい。

(日本化学会)

→「きみたちの魔法―化学『新』発見」展ホームページ

→ フォトアルバム

▲このページのトップへ戻る

 

第1回 CSJ化学フェスタ―2011世界化学年記念大会―:2011/11/22

 

紹介

早稲田大学講堂
会場 早稲田大学講堂

 日本化学会主催、早稲田大学共催の第1回CSJ化学フェスタ―2011世界化学年記念大会―が11月13日(日)から15日(火)の3日間、東京都新宿区の早稲田大学で開催された。 CSJ化学フェスタは日本化学会が秋の新規事業として創設したもので、社会の問題、課題をタイムリーに取り上げる「テーマフェスタ」や産業界と化学の連携を目的とする「産学官交流フェスタ」などで構成するのが特徴。第1回は東日本大震災を契機に大きな課題となっている「エネルギー問題と化学」、「未来の自動車、エレクトロニクス、住宅、資源・エネルギー」などをテーマに最新の状況と将来への方向性が示された。
企業R&Dセッションでは著名化学企業が自社の研究開発戦略、成功体験、苦労話を講演、隣接する会場では学生ポスターセッションでは約300のポスター発表があり、活発な交流がみられた。 また前夜祭・公開企画では2010年ノーベル化学賞を受賞した鈴木章北海道大学名誉教授の講演、蔡安邦東北大学教授の2011年ノーベル化学賞を受賞したシュヒトマン教授の準結晶解説講演などが行われた。

(日本化学会)

→ フォトアルバム

▲このページのトップへ戻る

 

世界化学年記念シンポジウム・講演会:2011/11/8

 

紹介

世界化学年記念シンポジウム・付設展示会場
世界化学年記念シンポジウム・付設展示会場

化学工業日報社主催,日本化学会などが後援する「世界化学年記念シンポジウム・講演会」が10月27日,28日の2日間,東京都千代田区一ツ橋の学術総合センターで開催されました。
 日本化学会では化学遺産委員会(植村榮委員長)を中心に企画検討,第2回化学遺産に認定された「わが国のセルロイド工業の発祥を示す資料」のなかから黒いキューピー人形やこれまで認定された化学遺産の貴重な資料,マリー・キュリー関係書籍,化学切手,女性世界化学年女性化学賞を受賞した相馬芳枝神戸大学特別顧問,アジア化学連合化学教育賞を受賞した荻野和子東北大学名誉教授のパネルが展示されました。
 また,第5回化学遺産市民講座が開催,植村榮委員長,山本明夫東京工業大学名誉教授の講演,化学遺産に関する講演が行われ,多くの方が熱心に聴講していました。

(日本化学会)

→ フォトアルバム

▲このページのトップへ戻る

 

The 14th Asian Chemical Congressに参加して:2011/11/8

 

コラム

発行日時:2011/11/01
著者:鈴木教之(上智大学)
初出:化学と工業 │ Vol.64-11 November 2011

アジアの化学会議ACC

2011 年9 月5 日から同8 日にかけて,バンコク(タイ)において開催されたThe 14th Asian Chemical Congress(以下14ACC )に参加した。本学会は,アジア化学会連合(Federationof Asian Chemical Societies, 以下 FACS)の主催により,化学の広い分野を対象として,隔年で開催される。今回は,スパワン・タンタヤノン,タイ化学会会長を実行委員長として開催された。

目立った日本からの貢献

荻野和子先生の受賞講演

14ACC には48 ヵ国から約1,500 人の 出席者があったが,日本からの参加者は318 人で,開催国タイの475 人に次いで多かった。招待講演520 件,一般講演292 件,ポスター671 件の発表があり, 熱い討論が3 日間繰り広げられた。タイは雨季で毎日のように午後にはスコールが降る。むせ返る熱気と辛い食事,冷たいビールに刺激を受けながら学会を楽 しんだ。
FACS では毎ACC において,アジアで活躍する化学者が5 つのカテゴリー別に表彰される。本年は化学教育賞に東北大学名誉教授の荻野和子先生が選出さ れ,開会式で表彰が行われた。荻野先生のマイクロスケールケミストリーを利用した,安価で安全な化学実験装置の開発と若い世代への化学教育の啓発活動は国 際的に高く評価されている。先生の受賞講演では,実演を交えて装置が紹介された。水の電気分解による水素の発生を,数十秒で観察することができ,かつ実験 設備の全くない講演会場でも実演できる。
会場ではロシアの参加者から,マイクロスケール装置を紹介するウェブサイトや取扱説明書の英語版を早急に作ってほしいと,強い要請があった(本講演の内容は10月3 日付C&EN にも紹介された)。また,昨年ノーベル化学賞を受賞された鈴木章先生,根岸英一先生へFACS Fellow の称号が贈られることが決まった。

アジア化学会連合(FACS)とは

閉会式。大会旗が手渡された。

FACS は,1979 年に発足したアジアの29 の国と地域の化学会からなる連合で,東アジアからオセアニア,西アジアまで含む組織である。ACC開催国が会議後の2 年間会長国を務める。通例ACC の直前に総会が開催される。今回も岩澤康裕日本化学会会長を含めて各国化学会の代表が一堂に集い,FACS の活動,ACC の運営などについて協議された。FACS はアメリカ化学会と協定を結び合同シンポジウムを開催するなど,アジア地域の化学会の代表として活発な国際活動を展開している。ただ予算規模が小さい,恒久的な事務局がない,など今後考慮すべき課題もある。実務的な事項は役員会(Executive Committee, 以下EXCO)によって話し合われる。
筆者はニュースレターの編集委員として2009 年からEXCO に参加し,1 期2 年の役を務めさせていただいた。今学会を境に新たにアジアを3 地域に分割し,そ れぞれの代表をEXCO メンバーとすることが決まった。東アジア・太平洋地域から日本が代表として選出され,日本化学会国際交流委員会委員長・高橋保先生 (北海道大学触媒化学研究センター)が参加されることとなった。次のACC は2013 年夏にシンガポールで開催される。
2015 年にはバングラデシュで開催されることが,今回の総会で決定した。

アジアにおける日本の化学

急成長を遂げるアジアは,日本の化学工業にとって重要な生産拠点であり市場である。アジアの化学における日本チー ムの存在感をFACS の活動の中でも高めていくことが今後必要であろう。

(鈴木教之)


→マイクロスケール化学実験は楽しい:東北大学医療技術短期大学部名誉教授 荻野和子(初出:化学と工業 │ Vol.61-4 April 2011)

▲このページのトップへ戻る

 

世界化学年記念シンポジウム開催:2011/9/29

 

紹介

文部科学省 訪問
上田髞V経済産業省製造産業局長、野依良治理化学研究所理事長、小林喜光三菱ケミカルホールディングス社長(左から)

世界化学年記念シンポジウム「化学が未来をリードする条件は?」が28日、東京都文京区本郷の東京大学安田講堂で開催された。
野依良治理化学研究所理事長、小林喜光三菱ケミカルホールディングス社長、上田髞V経済産業省製造産業局長が日本の化学および化学産業が未来に向けて成長する課題と可能性をそれぞれの視点から示した。
研究者、企業人、学生など450名が参加、熱心に聴講した。シンポジウム閉会後も野依理事長と学生、講師、研究者と企業人がいたるところで意見交換、情報交換をする姿が見られた。

(日本化学会)

→ フォトアルバム

▲このページのトップへ戻る

 

相馬芳枝氏  ”女性化学賞”授賞式 :2011/8/5

 

紹介

相馬芳枝氏 受賞写真
相馬芳枝氏 受賞直後の記念写真

8月2日プエルトリコにて、IUPACの総会の中で”女性化学賞”の授賞式が行われ、相馬芳枝氏が表彰された。

200-300人が見守る中、18時半〜セレモニーが始まった。
まず、キュリー夫人の生涯をしのぶ劇(独り芝居)があった。生誕から1902年ころまでを描く感動的な物語。
19時45分頃から表彰式。国別のアルファベット順で登壇し、授与された。全員終了までまで、21時近くまでかかったが、多くの人が残って、受賞者の栄誉をたたえた。
終了後、日本からの出席者を中心にお祝いの会を催した。

(日本化学会常務理事 川島信之)

<追記>
「女性化学賞」を受賞された相馬芳枝先生が、「週刊 女性自身」(11月8日号)の「シリーズ人間」で、和製キュリー夫人として紹介されています。


→Distinguished Women in Chemistry/Chemical Engineering (英語)

→受賞者の功績一覧 (英語)

→キュリー夫人の劇:ビデオ配信 (英語)

→ フォトアルバム

▲このページのトップへ戻る

 

世界化学年と化学の挑戦:2011/8/1

 

コラム

発行日時:2011/08/01
著者:岩澤康裕(電気通信大学燃料電池イノベーション研究センター)
初出:化学と工業 │ Vol.64-8 August 2011

「世界化学年」が決まった経緯と背景

第72 回国際連合総会本会議(2008 年12 月19 日)において,2011 年を「世界化学年(International Year of Chemistry:IYC2011)」とすることが決められた。「世界化学年」は,国際純正・応用化学連合(IUPAC)からの呼びかけに国際連合教育科学文化機関(UNESCO)が賛同し,理事会がその179 回会期で採択し,国際連合に提案して実現したものである。IUPAC の日本の窓口である日本学術会議化学委員会(当時の委員長:岩澤康裕)とIUPAC 分科会(当時の委員長:北川禎三)はIUPAC に賛同し,UNESCO 日本支部に働きかけて我が国も「世界化学年」の共同提案国となった。2011年はキュリー夫人(マリア・スクウォドフスカ=キュリー(Maria Sklodowska-Curie, 1867 年11 月7 日〜 1934年7 月4 日))のノーベル化学賞受賞(ラジウム,ポロニウムの発見とラジウムの性質及びその化合物の研究で1911 年受賞)から100 年目に当たり,また,IUPACの前身機関である国際化学会連合(1919 年にIUPAC に名称変更)が設立されて100 年に当たる記念すべき年でもある。


ラジウムは原子番号88 の元素。ポロニウムは彼女の祖国ポーランドにちなんで名づけられた原子番号84 の元素で,どちらも,すべての同位体が放射性を持つ。キュリー夫人は,1903 年に「放射能の研究」でノーベル物理学賞も受賞している。ウラン鉱石からX 線とは異なる放射線が出ていることを発見し,その性質を「放射能」(radioactivity)と名付けることを提案したのもキュリー夫人である。


Nature, 469, 7328(Jan 2011)に,「世界化学年を祝う:科学の中核の将来」と題する記事が掲載され,“セントラルサイエンス”としての“化学”の貢献に期待が寄せられている。

「世界化学年」の活動

世界化学年2011ロゴ

「世界化学年」は,統一テーマ“Chemistry-our life, our future”の下,@化学に対する社会の理解増進,A若い世代の化学への興味の喚起,B創造的未来への化学者の熱意ある貢献への支援,C女性の化学における活躍の場の支援を目的に,世界各国が連動して化学に関する啓発・普及活動を行うことにしている。世界化学年のロゴを上記に示す。化学の重要性に対する社会の理解を促進するとともに,持続可能な社会の実現の上で化学の果たす役割を再認識することが求められ,「世界化学年」の旗印の下,産官学が連携・協力して活動することが推奨される。我が国においては,化学関係の学協会・諸団体をはじめ大学や産業界がすでにこの趣旨・目的に沿った活動を長年にわたり展開してきており,例えば,夢化学21 を定期的に開催したり,昨年7 月には国際化学オリンピックを東京で開催するなど,高校生を含め広く一般国民に対し化学の啓発と人材育成に努めてきている。我が国の「世界化学年」事業を推進するため,2010年8 月6 日,世界化学年日本委員会(委員長:野依良治理化学研究所理事長,副委員長:岩澤康裕日本化学会会長,御園生誠日本化学連合会長)が発足し,企画委員会(委員長:岩澤康裕日本化学会会長)と実行委員会(委員長:西出宏之前高分子化学会会長)が設置され,事務局が日本化学連合におかれた。委員には有馬朗人元文部大臣,米倉弘昌日本経団連会長,毛利衛日本科学未来館長,近藤信司国立科学博物館館長,北澤宏一科学技術振興機構理事長,巽和行IUPAC 副会長など各界の代表者が顔をそろえている。両委員会の連携のもと様々な企画立案が行われ,一方で,実質的には日本化学会をはじめ多くの化学系学協会がそれぞれの記念企画を実行することになっている。また,大学・研究機関,企業,メディア等も個々の企画により参画している。IUPAC に設置されたIYC Management Committee が,「世界化学年」に関する全世界の事業企画を統括している。6 月現在,我が国ではすでに73件の企画・催し物が世界化学年事業として登録されロゴを冠して様々なイベントが遂行されている。現在,様々な企画が立案中であるが,以下にIUPAC と日本化学会等における具体的事業のいくつかをあげる。


 

2010 年12 月・カウントダウン記念シンポジウム(日本化学連合)
2010 年12 月・IYC レセプション(日本化学会,Pacifichem2010)
2011 年1 月・IYC 開会セレモニー(IUPAC,パリUNESCO 本部)
2011 年6 月・日独シンポジウム(日本化学会・ドイツ化学会)
2011 年8 月・世界化学リーダーシップ会議(IUPAC,プエルトリコ)
2011 年8 月・キュリー夫人読書感想文コンクール(日本化学連合)
2011 年9 月・世界化学年記念シンポジウム(日本化学会)
2011 年9 月・日本の化学者展(国立科学博物館,日本化学会)
2011 年10 月・化学コミュニケーション賞(日本化学連合)
2011 年11 月・夢化学21 夏休み子供化学実験ショー(日本化学会,化学工学会,新化学発展協会,日本化学工業協会)
2011 年11 月・きみたちの魔法―化学「新」発見展(日本科学未来館,日本化学会)
2011 年12 月・科学フェスタ(内閣府,IYC 日本委員会)
2011 年12 月・IYC 閉会セレモニー(IUPAC,ブリュッセル)

 


IUPAC では,組織的な取り組みに加え,個人レベルで「世界化学年」に参加できるシステム「IYC ネットワーク」を整備している。入力は英語に限られるが,日本からも多くの「個人企画」を投稿したり,「化学に 対する思い」を発信するなど,ネットワークを通した国際的な活動に直接参加することが期待される。

化学の挑戦と心の文化

この一世紀の間に,量子化学,空中窒素固定(アンモニア合成),ポリエチレンやナイロン,導電性高分子,不斉医薬合成,酵素触媒・光触媒,化学反応(クロスカップリングなど),フラーレン・ナノチューブ・グラフェン,原子/分子計測・分子イメージング,太陽電池・蓄電池・燃料電池など,化学においてめざましい発見や発明がなされ,その成果を活かして多くの優れた技術が生まれた。科学・技術は政策や経済を超えて社会に貢献すると期待されているが,そのためには基礎科学・先進技術の一層の発展が必要であり,若者の自由な発想力と多様な価値観に根差した科学・技術の推進を支援する必要がある。そのためにも一般国民の理解が必要である。人類社会は,有限の地球上における資源の不足・枯渇,エネルギー問題,気候変動や環境劣化,水や食料問題,医療・健康・安全,新興・再興感染症,大災害等をはじめとする様々な地球規模の問題に直面しており,それらの解決に向けて科学・技術に対する期待がますます大きい。それらの問題の多くに化学の貢献が求められている。本年3 月11 日,我が国では東日本大震災に端を発した福島第一原子力発電所放射能漏出事故が起こり,我が国のみならず世界各国のエネルギー政策に深刻な問題を投げかけた。
世界化学年の今年,化学界も真剣にこの種の問題に向き合い,汚染除去,エネルギー戦略,復興グランドデザインの作成等を通して,今後の資源・エネルギー・環境等に貢献することが求められる。先端科学・先進技術は,長い進化の過程で人間だけが獲得した「心の文化」といえる知的活動である。「世界化学年」事業が世界各所で行われる2011年,化学の一層の振興と社会への幅広い普及・啓発を図り,我が国の科学・技術が一層振興し,持続可能な社会を支える人材の育成と増進が図られ,我が国の力強い将来が構築される輝く化学年となることを願う。

(岩澤康裕)

▲このページのトップへ戻る

 

化学オリンピック代表4名が、文科省、経産省に帰国報告:2011/8/1

 

紹介

文部科学省 訪問
文部科学省 訪問

7月19日(火)、化学オリンピック代表4名が成田到着後、霞が関に直行しました。メンターの下井守先生(化学会教育・普及部門長、東大)、竹内先生(東工 大)、化学会から川島が同行しました。
 文科省では鈴木寛副大臣に、昨年に続いて歓迎をしていただきました。代表4名に対して、ねぎらいと感謝に続いて、「科学技術と社会の関係がより一層重要になってきている、国民のリテラシーをあげる努力も必要であるが、科学に従事する立場からの歩み寄りも重要である、その意味で、皆さんに橋渡しの役割を期待したい。また、皆さんより若い人、後輩諸君に、科学・化学の面白さを伝えて行って欲しい」との励ましの言葉がありました。
 経産省では長尾正彦大臣官房審議官(製造産業局担当)が、帰国日が同じとなったなでしこジャパンの活躍と重ねて、アウェイで実力を発揮した4名に最大の賛辞を送っていただきました。震災直後に発生した、サプライチェーン問題を引き合いにして、日本の化学技術・化学産業の世界レベルでの重要性にあらためて気付かされたこと、その復旧にあたって、関係者が一丸となって取組んだ結果、ほぼ再スタートできたことから、チームワークの重要性を語っていただきました。
 4名の代表は、今回、各国の高校生と交流できたことを大きな成果の一つとして紹介し、また今後の将来について、社会に貢献するという視点で化学、科学に取り組んでいきたいと決意を示しました。

(日本化学会常務理事 川島信之)

→【表敬訪問】文部科学省、経済産業省

→ フォトアルバム

▲このページのトップへ戻る

 

女性化学賞に相馬芳枝氏:2011/7/14

 

紹介

相馬芳枝氏 写真
相馬芳枝氏

世界化学年に当たり、IUPAC では化学や化学工業の分野で優れた業績をあげた女性化学者を顕彰する”女性化学賞”を設けました。
日本から相馬芳枝氏が受賞決定。優れた触媒化学の研究業績に加え、女性化学者の育成など幅広い活動実績が評価され、本賞の受賞に結びつきました。
2009年にノーベル化学賞を受賞したイスラエルのアダ・ヨナット氏や、研究者としても知られるタイのチュラポン王女ら、16カ国の女性化学者23人が選ばれています。8月2日、プエルトリコで開かれるIUPAC総会で表彰されます。

(日本化学会IYC委員会)


→相馬芳枝氏IYC2011の女性化学賞を受賞

→Distinguished Women in Chemistry/Chemical Engineering (英語)

→受賞者一覧(英語)

▲このページのトップへ戻る

 

キュリー夫人と玉川温泉:2011/7/13

 

コラム

発行日時:2011/01/01
著者:吉祥瑞枝(サイエンススタジオ・マリー)
初出:化学と工業 │ Vol.64-1 January 2011

マリー・キュリーが北投石を用いていたら...

玉川温泉
玉川温泉

早春,ラジウム温泉として有名な玉川温泉(秋田県)を訪れた。ラジウム温泉と呼ばれる温泉は二股ラジウム温泉(北海道),増富温泉(山梨県),三朝温泉(鳥取県)などがある。玉川温泉は世界で2カ所,台湾の北投温泉と日本の玉川温泉で産出するといわれる天然記念物“北投石(Ba,Pb)SO4”の温泉である。


ラジウムというとキュリー夫人。マリー・キュリーはベクレル線の追試をした。そして,もっと強い放射能を持つ鉱物ピッチブレンドに未知の元素の存在を予測して,その強さをキュリー兄弟の発明した電気計を使い定量的に測定した。ピッ チブレンドの中にポロニウムとラジウムの2つの新元素を発見したのが1898年。1902年には美しい青白い光りを放つ原子番号 88番,ラジウムの単離に成功した。これには8トンものピッチブレンドから分別結晶法により0.1gのラジウムを得るのに3年9ヶ月もの辛苦な作業が伴った。もし,マリー・キュリーが北投石を用いていたら...

(吉祥瑞枝)

▲このページのトップへ戻る

 

荻野和子氏がFACS化学教育賞を受賞:2011/7/11

 

紹介

荻原和子氏
荻野和子氏

アジア化学会連合(FACS)では、アジアの化学や化学工業の発展に貢献された方を対象として5種類の賞を設け、顕彰を行っています。
今年、化学教育賞に当たるFACS Distinguished Contribution to Chemical Education Award 2011を荻野和子氏(東北大学医療技術短期大学部名誉教授)が受賞しました。
9月5−8日にタイ・バンコクで開催される第14回アジア化学会議で表彰されます。

(日本化学会IYC委員会)

→FACS Award受賞者の発表

→FACSホームページ(英語)

→14th Asian Chemical Congress 2011(英語)

▲このページのトップへ戻る

 

映画紹介『サムライ化学者 高峰譲吉の生涯』:2011/6/1

 

紹介

映画「サムライ化学者 高峰譲吉の生涯」ポスター
イラストレーター松下進氏によるポスター

ワシントンD.C.への桜寄贈の立役者であり、医学の発展に大いに貢献した化学者・高峰譲吉の生涯を映画化した伝記ドラマ。現在も胃腸薬などに使われるタカヂアスターゼを発明する一方、激動の明治時代に日本とアメリカの架け橋となり、世界をリードした化学者・高峰譲吉の生きざまは注目だ。

(日本化学会IYC委員会)

→映画公式サイト

▲このページのトップへ戻る

 

化学かるた 元素編:2011/6/1

 

紹介

化学カルタ画像
化学かるたパッケージ

「夢・化学-21」委員会はこのほど、子どもたちに遊び感覚で化学に親しんでもらい、化学の楽しさや面白さを理解してもらうため、『化学かるた 元素編』を制作しました。
約110種類の元素のなかから知名度の高い48種類を選び、小学校低学年の子供たちに理解してもらえるよう、それぞれの元素の特長や用途をわかりやすく読み札と絵札にしています。今後、各地の実験教室等で活用される予定です。

(日本化学会IYC委員会)

→化学かるた 紹介サイト

▲このページのトップへ戻る

 

化学遺産:2011/6/1

 

紹介

認定化学遺産001号画像
認定化学遺産001号 宇田川榕菴自ら描いたと推定されるキップの装置 (『舎密器械図彙』)

化学遺産委員会は毎年「化学遺産認定」を行っています。
化学の歴史資料の中でも特に貴重なものを認定することにより、文化遺産、産業遺産として次世代に伝え、今後の発展に役立てます。

(日本化学会)

→化学遺産委員会ホームページ

▲このページのトップへ戻る

 

キュリー夫人と黒い石:2011/6/1

 

コラム

発行日時:2011/02/01
著者:吉祥瑞枝(サイエンススタジオ・マリー)
初出:化学と工業 │ Vol.64-2 February 2011

キュリー夫人のノーベル化学賞受賞100周年

キュリー夫人はラジウム・ウーマンと呼ばれ,アインシュタインと並ぶ20世紀の科学の巨人の一人である。ウランが含まれる鉱石ピッチブレンドの中にウランよりも強い放射能を持つポロニウム(Po)とラジウム(Ra)の二元素を発見し,ノーベル賞を受賞した最初の女性で,2 度のノーベル賞(1903 年物理学,1911年化学)を受賞した最初の人。キュリー夫人は研究のみならず,子どもの教育にも熱心で研究者仲間と共同授業「キュリー夫人の理科教室」を催した。その授業は科学的なものの見方を身につけさせ,知的好奇心を刺激してわくわくさせるものだった。この授業を受けた少女イザベルは当時,女性の職業として珍しい化学技術者になった。マリーの娘イレーヌは母の研究を引き継ぎノーベル化学賞受賞。2010 年まで840 人余のノーベル賞受賞者の中でキュリー夫人は唯一母娘での受賞である。

ピッチブレンドに含まれる放射性の高い新物質

ラジウム鉱石画像
PECHBLENDE(UO3, UO2, PbO, etc)
ピエールとマリー・キュリー大学にて筆者撮影

キュリー夫人が1897 年12 月16 日につけ始めた実験ノートによるとピエール兄弟発明の電気計を使って放射線の測定を始めた。最初は白いウラン粉末,金,銅など13 の単一元素を調べた。1898 年2 月17 日重くて黒い鉱物性化合物ピッチブレンドを測定した。2 月24 日にはトリウムは含むがウランは全く含まないエスキン石を測定し,トリウムからはウランより強く,ピッチブレンドからはそのどちらよりも強い放射線を得た。1898 年3 月18 日2 冊目の実験ノートをつけ始め,ピッチブレンド同様のウラン化合物シャルコライト鉱石を試験した。4 月9 日マリーは純粋なウランと産地の異なる3 種類のピッチプレンドについての測定を繰り返し,ウランよりも2倍,3 倍,4 倍もの強い放射線を確認して,3 日後;4 月12 日にキュリー夫人は論文をアカデミーに提出した。次の木曜日にはキュリー夫妻は100 g のピッチブレンドを粉砕し,放射線を出す謎の元素の分離作業を始めた。1898 年12 月26 日アカデミー発表論文は“ピッチブレンドに含まれる放射性の高い新物質について”,すなわちラジウムの発見であった。

キュリー夫人の鉱石への関心

放射能についてキュリー夫人が最も関心を寄せていたのは,放射性元素そのものだった。「もし,何か美しい放射性の資料をみつけたら,研究所のコレクションに送って下さい。」と遠い外国へ行く者は鉱物を探し求めることが課せられていた。研究所のチェコ人がアムンゼンと北極に行ったとき,キュリー夫人のために鉱物試料を持ち帰っている。筆者は本誌1 月号にラジウム温泉で有名な玉川温泉を紹介したが,もしキュリー夫人が“北投石”を知っていたら…。マーニャという愛称で呼ばれていた幼少の頃,読書を好み,好奇心に満ちた少女として父の書斎の戸棚で見た鉱物標本…そのとき胸躍らせた石の試料と後年の不思議な黒い石ピッチブレンドが重なる。

(吉祥瑞枝)

▲このページのトップへ戻る